デンタル・ピース④
こんにちわ、ヨヨギ在住のサラリーマン、クマおじです。少し風邪気味です。
では、クマおじの登場するお話「デンタル・ピース」のつづきです。
彼女がサークルに入会した冬、仲間と合宿を企画した。合宿といっても、ただ安い温泉宿に泊まり、みんなで一晩中飲んで、騒ぐだけなのだが、それもまた、一大イベントなのだ。
サークルメンバーに対し、参加者を募ったところ、彼女も参加してくれることになった。
彼女は、決して排他的な雰囲気を持った女の子ではなかったが、基本的に引っ込み思案で、あまり仲間と打ち解けることはなかった。いつも何かにおびえるように、みんなとは距離を置いて接しているように見えた。その姿は、幼稚園で仲間はずれにされている小さな女の子のようで、私はいつも気がかりだった。
そんな彼女が、今回の合宿に参加すると聞いて、私は少々心配になった。きっと、彼女は、友達づきあいに対しても、人並み以上に緊張をするタイプだろうと思ったからだ。だからきっと、今回の合宿でも、きっと彼女はとても緊張して過ごすことになるだろう。私は、彼女から目を離すまいと決めた。いざというときは、フォローしてあげたい、そう思った。
合宿当日を迎え、待ち合わせの場所にみんなが集まった。レンタカーで伊東の温泉へ行くことになっていた。
じゃんけんで運転手を決め、目的地まで向かった。途中、誰かの思いつきで、小さなテーマパークに寄ることにした。テーマパークでは自由行動とし、各々勝手なことをして遊んだ。
ふと、彼女を見ると、赤いスーパーボールでひとり遊んでいた。ぽんぽん弾むそれを、地面にたたきつけて、走り回っている。
その様子は、本当に子供のようで可愛らしく、とても無邪気に見えた。
思わず私はじっと見つめた。
すると、ふと彼女が私の視線に気づいた。そして、ボールで遊ぶ手を止めて、
「私、変ですか?」
と言った。
「え?何が?」
「だって、じっと見てるから・・・。こんなボールで遊んでるの、変なのかなと思って」
「いや。そんなことない。楽しそうだなと思って。普段、そんなにリラックスした顔、見せないから」
彼女は、赤くなって、
「そうですか。私、社交的なほうじゃないから。みんなに迷惑かけてますよね。」
と言い訳するように、呟いた。
「そんなことない。社交的じゃなくても、仲間は仲間だ。迷惑だなんてとんでもない」
「ありがとうございます。私、一人っ子で、おじいちゃん子だったんです。そのせいか、昔から、友達と遊んだりするの、得意じゃないんです。仲間に入りたいのに、うまく入っていけなくて、そうこうするうちに、あいつは仲間じゃないんだって思われちゃったりして、いつの間にかひとりになっちゃうんです。だから、仲間だって言ってもらえて、すごくうれしかった。そんなこと言われたの、はじめてかもしれない」
珍しく彼女は、よく喋った。私は、自分のことを「不幸なお姫様」みたいに語る、彼女のその大らかな育ち方に、呆れながらも、妙な安心感を覚えていた。
ふと見ると、彼女は、また、ボール遊びを再開していた。
と、そのとき、スーパーボールが、私のほうへ飛んできた。
私は反射的に受け取った。
彼女と目が合った。彼女は、おずおずと微笑んで、言った。
「それ、あげます。仲間って言ってくれたから。お礼です」
詳細は省くが、そのスーパーボールのことがあって、私と彼女は付き合うようになった。
学生時代から、10年間、私と彼女は、ずっと一緒だった。卒業して、就職して、彼女の引っ込み思案な笑顔が、いつの間にか、堂々とした素敵な女性の笑顔に変わっていくのをずっと見ていた。この先、彼女の笑顔がどんなふうに変わっていくのか、私はドラマを見るみたいに、楽しみだった。
スーパーボールは、今も持っている。彼女がまだ元気で、10年後に病気になって死ぬなんて思いもせずに、笑っていた頃の、大切な、大切な思い出だからだ。
つづく
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コメント
こんばんは。
宣伝メールをいただきまして
お邪魔してますm(_ _)m
彼女には死なないで欲しかったです…。
そしてこのお話の続きが気になります!
お休みの日にでも、よろしくお願いします。
投稿: にゃぁ。 | 2009.03.06 02:25
にゃぁさんへ
遊びに来てくれてありがとうございます。
小説はなかなか更新できないのですが、がんばってしあわせなお話を書いてみようと思います!!
投稿: クマおじ | 2009.03.06 19:33